「一番ワクワクするのは、“まだ見ぬ濃いやつ”に出会うことなんです。」
そう笑うのは、パンクロックなファッションに身を包む、南城市在住のデザイナー。
グラフィック、映像撮影、WEB、アートディレクション。そしてイラストやスチール撮影まで自ら行う。
名刺に書かれている「デザイナー・ディレクター」という肩書では想像がつかないほど、守備範囲は広い。
けれど喜名さん自身はいたって自然体だ。

デザインに憑かれた子ども時代
こどもの頃からチラシの文字や色使いに異様な関心を示していた喜名さんは、
小学二年生では「北斗の拳」のロゴを完璧に模写していたというから、その集中力は尋常ではないと感じる。
「部屋にこもって黙々とやってました。典型的な“陰キャ”ですよね。」と笑う。
その後、デザイン業界で仕事をするも、若いころは月数万円の給料。仕事を離れ、アパレル業界へ。
イタリアのハイブランドで働いた後、再びデザインの世界へと戻る。
リーマンショック、休養、そしてフリーランスとしての再挑戦。紆余曲折を経て今の喜名さんがある。

アパレルがくれた武器
「アパレル時代に、一番学んだのは“人と話す力”でした。」
接客を通じて、初対面の相手との距離を縮める術を身につけた。
「砕けた話からの打ち合わせを心がけていて、クライアントとも仕事そっちのけで雑談が進んじゃったり。
でも、リラックスした状況から仕事にも繋がりますし、大切だと思っています。」
小さい頃部屋で黙々とやっていた時代から、接客の現場で“コミュニケーション力”を磨き、
デザインの現場に戻った時には自身の大きな強みとなった。


デザイナーとは、黒子のような存在
そんな喜名さんは、自らを「黒子」と話す。
デザインは「作品」ではなく「成果物」。主役はクライアントで、自分はその光を支える影のような存在。
それでも、長年の試行錯誤で染みついた手癖が、喜名さんの個性を滲ませ、洗練されたデザインが生まれていく。
「全部載せたい」という要望には簡単に首を縦に振らず、本当に伝えるべきことを一緒に探る。
クライアントが見落としている魅力、言葉にできない想いを、形としてすくい上げる。
ロゴひとつにしても、企業にとっては大事な”顔”。
業界においての立ち位置やターゲットの感性まで読み解き、戦略を描くようにデザインを組み立てる。
それが喜名さんにとっての仕事であり、信頼の証でもある。


南城市に根を下ろして
喜名さんは、この街のデザイン感覚を「良くも悪くも“都市よりも少し遅れている”」と感じている。
だからこそ、やる意味があるのだという。
「良いデザインが増えれば、20年30年後の南城市はもっと良い街になる。
仕組みや企画を含めたデザインの力で、未来に寄与したいんです。」
地元南城市に戻ってきたからには、南城市に貢献していきたい。そういう姿勢を強く感じる。
出会いを求めて
今後、どんな人に出会いたいかと質問すると、
「なんじょう市民大学の16期生みたいに、まだ見ぬ“濃いやつ”に会いたい。」との答えが。
市民大学16期として今年入学した喜名さんには、同期の面子が色濃く、興味深く思っているとのこと。
各々の強い個性をおもしろがれる心は、協調性や、
様々な経験から授かってきたコミニケーション能力が高いからこそだとも感じる。
喜名さんを含めた市民同士での交流から、今後どんな活動が生まれていくのか、
事務局としても興味深く、大変ワクワクする存在だ。

南城市から広がるデザイン
県内はもちろん、県外案件もオンラインで請け負うが、喜名さんの視線は常に南城にある。
「地元企業、市民とがっつり組んで活動をしたい。南城市民割もあるんですよ。」
笑いながらそう言う目は、20年後を見ている。街も、人も、デザインで変わる。その未来を信じて。












