理学療法士として18年間、子どもから大人まで、さまざまな人のリハビリに携わってきた玉城和音さん。
現在は、その経験を活かし運動学・解剖学的知識・子どもの発達学を取り入れながら、産後ケア施設や、保育園、市町村の子育て支援センターなどで、赤ちゃんから子どもに関する講座を開催している。また、保育士や市町村職員など、子どもに関わる支援者を対象とした専門研修も担当。さらに、ママ同士がつながるサークルづくりにも取り組み、子育ての孤立を防ぐ活動を続けている。

リハビリの現実で芽生えた、予防医学への想い
病院で多くの患者のリハビリに向き合ってきた玉城さん。その日々のなかで、次第に強くなっていった想いがあった。
「病院に来る頃には、すでにケガや病気を抱えている。薬やリハビリで身体を整えるには時間がかかるし、高齢になって身体の歪みを改善するのも、本当に大変なんです。だからこそ、不調が生じる前に防ぐ“予防医学”が必要なのではないかと思うようになりました」
玉城さんが着目したのは、赤ちゃんの頃からバランスよく身体を使える土台を育てる「体軸作り」だった。体が発達していく早い段階から、健やかな身体づくりを支える。理学療法士としての実感と、自身の出産も重なったことで、玉城さんの関心は、子どもの頃からの予防や発達支援へと広がっていった。

自ら経験した孤独な子育て。「つながれる場所をつくりたい」
活動を本格的に始める大きなきっかけとなったのは、2人目の出産だった。
時期はコロナ禍。1人目出産時には、同じ時期に出産した友達と話したり、家族や周囲の人に支えてもらい過ごせた子育て。しかし、2人目の出産では、思うように人と会えず、玉城さん自身も孤独を経験したという。
「孤独な子育てを経験したからこそ、つながれる場所をつくりたい」
子どもの健やかな成長を支えること。そして、親が安心して子育てできる環境をつくること。その両方が必要なのではないか。自身の経験から生まれた想いは、親子向けの講座や地域での活動へとつながっていった。
さらに、発表する場が減った子どもたちがダンスや歌を披露できる場をつくろうと、2024年、2025年には、南城市役所で大型イベント「大きなわフェスタ」を企画・実施。子どもたちの活躍の場をつくるとともに、人と人が出会い、つながるきっかけを生み出してきた。

子育てを支えることは、親子だけに向き合うことではない。人が出会い、関係を育み、互いに支え合える地域をつくることでもある。玉城さんの活動は、そんな視点から少しずつ広がっている。
子どもと親の目線に立ち、人と人をつなぐ
活動のなかで大切にしているのは、コミュニケーションと笑顔、そして子どもと同じ目線に立つこと。
子育ての悩みは、専門家に相談するほどではないと思ったり、誰に話せばいいのか分からなかったりすることもある。だからこそ、特別な相談の場だけでなく、自然とコミュニケーションできる環境が必要だと考えていると話す。

そこで、講座のあとには、ママ同士が気軽に話せるランチ会などを組み合わせ、講座を通して学ぶだけでなく、参加者同士が顔見知りになり、ちょっとした悩みを共有できる関係を育てられるように工夫している。専門知識を一方的に伝えるのではなく、相手の目線に立ち、その人が安心して過ごせる関係をつくる。そこには、専門家としての視点だけでなく、子育てを経験した一人の母親としての想いも息づいている。
ひとりではなく、みんなで広げていく
今後の目標について尋ねると、ママサークルの拡大と活動を支える人材の育成、そして地域の居場所づくりを挙げた。
現在、南部地域を中心に約50名が参加するママサークルを、まずは100名規模へと広げていきたい。専門知識を持つ人たちと協力しながら、沖縄本島の北部や中部、そして県内各地へ届けることを目指している。
「自分一人で救える人数には限界があるからこそ、支援できる人を増やしていきたい」
その想いから、子どもや子育て世代に関わる人たちに専門知識を伝え、地域で支援を担う人材を育てることにも力を入れたいと話す。一人で多くの人を支えるのではなく、支えられる人を増やしていく。活動を広げるための大切な一歩だ。
ママたちが集まる場所から、地域の日常を変えていく

もう一つ、玉城さんが目指しているのが、南城市の公民館を活用した居場所づくりである。
公民館には、地域の年配の方々が集まるサークルや活動の場がある一方で、子育て世代が日常的に利用する機会は、まだ少ないと感じているという。
地域にすでにある場所を生かし、子育て世代が気軽に立ち寄れる環境を整える。何か特別な用事がなくても人と会える、そんな場所が日常のなかにあれば、子育ての孤立を防ぐことにもつながっていくはずだ。

子育てを支えるために必要なのは、専門的な知識や技術だけではない。困ったときに相談できる人がいること、仲間がいること、そして、ひとりで抱え込まなくてもいいと思える場所があること。
親子が笑顔で集まり、自然に会話が生まれる。そんな何気ない小さな積み重ねが、誰もが安心して子育てできる地域をつくっていくのかもしれない。













